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国の安全基準を満たさないチャイルドシートがインターネット上で販売されていることが、日本自動車部品工業会(東京)の調査で分かった。
複数種類が出回っているが、国内の流通量ははっきりしない。
いずれも正規品より極端に強度が低く、事故時の安全性はほぼ見込めないという。
使用した場合、ドライバーは道路交通法に抵触する可能性があり、国土交通省は正規品を示す「Eマーク」を確認して購入するよう注意を呼びかけている。

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「持ち運びに便利」「らくらく携帯できます」。大手通販サイトで手軽さが強調されている2色のチャイルドシートは、重量がわずか650gで定価2380円。
ほかにもネット上で複数の製品が売られ、いずれも1万円未満だ。
これらは、国交省の安全審査を経ておらず、未承認だ。
正規品は小型のものでも重さが4kg以上あり、安くても1万円以上する。

同工業会によると、加盟するメーカー各社が未承認製品を購入して調べると、正規品では強化プラスチックを内蔵しているシートの大部分が、布製だった。
ベルトの留め金も鉄製ではなくプラスチック製で、横方向から受ける衝撃を和らげるガードすらなかった。

こうした未承認品は数年前からネット通販で出回り始めた。だが発送元の大半が海外のため、追跡が難しい。
在庫をさばくと業者名を変えて再びネットに出品するケースがあるとみられ、国交省や警察庁、消費者庁など関係省庁も国内での流通量など正確なデータはないのが実情だ。

チャイルドシートは自動車の車体と同じように強度基準があり、国の承認を受けなければ生産・販売できない。
チャイルドシートの着用を義務づける道路交通法はドライバーに対し、基準を満たした製品を使うよう定めている。
警察庁の担当者は「基準を満たさない製品の使用は違法行為」と強調する。

安全基準を満たした製品は、2012年7月以降は「Eマーク」、それ以前は「自マーク」が付いている。
同工業会の冨樫晃・技術部次長は「正規品の価格は安全に設計したコストを含んでいる。安さに惑わされないでほしい」と呼びかけている。【内橋寿明】

《チャイルドシート》
道路交通法により2000年、6歳未満の幼児への着用が義務づけられた。違反した場合の点数は1点で反則金はない。
主に身長100cm以下(1~4歳程度)を対象とした製品のほか、首がすわっていない乳児を寝かせるベビーシート、大人用のシートベルトに合わせるため座高を上げるジュニアシートがある。
いずれも道路運送車両法で安全基準が定められており、販売後に問題があればリコール(回収・無償修理)の対象となる。
国土交通省などは、メーカーに性能向上を促すため、市販品の安全性能を格付けして公表している。