博物館の敷地内には、かつて相模野台地の雑木林の主要な樹種であったコナラが多く植えられています。秋の実りの季節に備え、すでに若いドングリが大きくなりつつあります。
しかし、比較的大きなコナラの株の多くが今、葉が茶色く変色し、枯れようとしています。
これは、全国的に蔓延する「ナラ枯れ」という現象によるものです。ナラ枯れは、コナラの幹を食害するカシノナガキクイムシ(通称カシナガ)という甲虫の一種が、コナラの病原菌であるナラ菌を媒介して起こす病気です。ナラ菌に感染した幹の細胞は死に、道管(幹の中で水分を通す組織)が目詰まりを起こします。その結果、梅雨明けの頃から急に葉が茶色く変色して枯れてしまいます。
比較的老齢のコナラがナラ菌に侵されて枯死すると言われ、大きな太いコナラに被害が多く見られます。博物館でも、カシナガが増殖、分散しないよう、幹に粘着テープを巻くなどして対策していますが、周辺の罹患木(りかんぼく)すべてに巻くわけにもいかず、抜本的な対策はできないのが現状です。
ただ、コナラはもともと長寿の木ではありません。生活エネルギーとして炭や薪を利用していた時代には、伐採によって更新され、健全な雑木林が育成されてきました。しかし現在はそうした管理がされず、放置林となっていました。そこへナラ枯れによって自然界がコナラの老齢林の更新をはかっているようにも見えます。
すでに西日本ではナラ枯れのピークが過ぎていると言われており、関東地方でもナラ枯れですべてのコナラが枯死するわけではないと考えられています。
そうは言っても、枯死したコナラは落枝や倒伏の危険があるため、これから伐採、除去を進めなくてはなりません。キアシドクガによるミズキの食害に続き、コナラにも受難が降りかかり、博物館周辺の樹林も様相を大きく変えようとしています。