博物館収蔵資料紹介~最近見ない調理具

今回取り上げるのは、かつてはよくあったのに、最近は台所であまり見かけなくなった調理用の道具です。

最初の写真は、「鰹節(かつおぶし)削り」です。鰹節は昆布(こんぶ)などと並び、和食には欠かせない出汁(だし)用の食材ですが、引き出しの付いた箱の上に鉋(かんな)の刃を乗せ、手で鰹節を押さえて前後に動かしながら削っていくと箱の引き出しの中に削られた鰹節が溜まります。

中央区星が丘の方から寄贈いただいたもので、写真で鉋の上に置いた鰹節も一緒に寄贈されました。朝起きると、味噌汁などに使う鰹節を削ったという思い出を持つ方も多いのではないでしょうか。                  

 

次の写真は、胡麻(ごま)やとろろ等をすりつぶしたり、和え物(あえもの)を混ぜたりするのに使う「すりばち」と「すりこぎ」(収集地・中央区田名)です。すりばちは陶製の鉢で、内側に細かい筋目が付いています。そして、木製のすりこぎでかき混ぜていきます。これらが広く普及したのは中世からで、すりつぶして食べる調理法は新しい食文化をもたらしたと言われています。                     

 

ところてんは、暑い夏場の食べ物として親しまれ、原料となる「てんぐさ」を煮だして固めたものを麺(めん)のように切って、酢じょうゆなどで食べます。次の写真はところてんを麺状に切る「ところてんつき」(緑区大島)で、箱の口から固まったところてんを入れて棒で突くと、箱の先に格子状の金属の網が張ってあり、細長く切れて押し出されてきます。

ところてんつきは、どの家にもあったわけではなかったようですが、それでも博物館には他の家から寄贈されたものがいくつかあります。                                    

 

今回紹介したのはいずれも調理の時に使う道具ですが、少し前には現代のように多くのものを手軽に買って食べるのではなく、自ら手間をかけて作っていた時代があったことを教えてくれます。

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