今年度の津久井城跡の城坂曲輪群(しろさかくるわぐん)7号曲輪の発掘調査を行うにあたり、9月21、22日に市民調査グループの方を対象に講習会・研修が開催されました。
場所は南区磯部の勝坂遺跡公園です。
はじめに発掘調査の基礎知識や図面の作成方法など、座学を行いました。
重要な点は2つあります。①なぜ発掘調査が必要なのか?②発掘調査をすると遺跡はどうなるのか?
①は津久井城の内容を知るために、建物跡、池跡などの遺構(不動産)や陶磁器・かわらけなどの遺物(動産)などの情報を得るためです。
これらの情報から津久井城の特徴は何か、城坂曲輪群にはどのような施設等があったのか、津久井城の機能や曲輪ごとの性格などを考えます。
②は発掘調査は遺跡の破壊であり、元には戻りません。警察による現場捜査や外科手術のように失敗は許されず、二度とやり直しができません。
そのため発掘調査の目的を明らかにし、遺跡の破壊を極力抑えるために最小限の範囲しか掘りません。遺跡の保存の観点からは掘削を受けずに埋まっている状態の方がより適切です。
そしてどこに何があったのか客観的な証拠を残すために、平面図などの記録を必ず作成し、発掘調査の後でも遺跡の様子が追証できるようにします。
以上の点を踏まえ、座学の後に図面作成の研修を行いました。テレビや映画などでは発掘調査の現場で刷毛やヘラなどで地面を熱心に探っている光景がよくありますが、実際は地味で動きが少ない記録作業の方が多い場合もあります。
今回は、平板測量による地形測量と遣方(やりかた)測量による平面図・断面図の作成を実際に行いました。
平面図は遺構にある、敷かれた石や溝などの状況を平面的に記録するもの、断面図は遺構の高さを記録し、平坦な部分や盛り上がる部分、あるいは凹みを表現します。
市民調査グループの方にとっては日常的に行う作業ではなく、今年の発掘調査が初めての方もいらっしゃるので、一つ一つ作業の流れを確認しながら作業を行います。
どのように図面を作成するのか、方眼紙に記録する慣れない作業に苦戦しつつも、おおよその流れを把握されていました。
11月から津久井城跡城坂曲輪群7号曲輪を発掘調査します。発掘調査の内容は本ブログで掲載していきますので、ぜひご覧ください。