5月下旬、自動車がひっきりなしに通る市内緑区の路上で、ムクドリが飛んだかと思ったら、道路標識の支柱に止まり、バタバタとなにやらやっています。
よく見ると、奥には真っ赤な口を開けたヒナが。ここは、ムクドリの巣でした。
ムクドリはもともと、木の洞(うろ)などに営巣する野鳥ですが、住宅など構造物のすき間にも巣をつくるようになり、里山から市街地まで分布を広げました。
しかし、近年は住宅もすき間の少ない構造になり、かつて住宅での営巣場所として定番だった「雨戸の戸袋(とぶくろ)」も、ムクドリが入る余地のないものに置き換わりつつあります。そこでムクドリは、上の写真のような道路標識や信号機などにすき間を見つけ、そこへ営巣することが多くなっています。
ここの巣は、ヒナは巣立ち間近のようで、ちょくちょく外を覗いていました。
すぐ近くの電柱では、トランス(柱上変圧器)の穴の中へスズメがスポッと入っていきました。スズメはムクドリよりも体が小さいので、小さなすき間で営巣しているようです。
都市の環境への適応は、ムクドリやスズメだけではなく、猛禽類などでもよく知られています。野山や川だけではなく、都市部でもこんな観察ができるので、野鳥観察は場所を選ばなくて面白いですね。
(生物担当学芸員)