日本のひっつきむしを象徴する存在と言えるのは、キク科のオナモミです。果実全体に、先端が鈎(かぎ)状に曲がったトゲを持ち、衣類などにしっかりとひっつきます。しかし、「オナモミ」という種名の在来植物は現在、非常に少なくなっています。神奈川県内では現在のところ安定した自生地はほとんど無く、絶滅危惧ⅠB類にランクされています。相模原市内などで現在よく見られるのは、外来種のオオオナモミです。
また、県内の沿岸部では、オオオナモミよりも果実がさらに大きなイガオナモミ(外来種)も見られます。
トゲにはさらに下向きの毛があり、念入りにデザインされたひっつきむしです。
さて、在来種のオナモミが、隣県のある場所に生えていると相模原植物調査会の会員から連絡があり、9月13日に早速行ってみました。
周辺地域でもここにしか無いようですが、この場所には株数も多くありました。上記2種よりも果実が小さく、トゲも全体的に短いのが特徴です。
形も生育環境もよく似ているのに、なぜ減ったり増えたりしているのか、よくわかっていません。ちなみに、オナモミの地方名には「バカ」というものがあり、ひっつきむしを総称する場合と、明確にオナモミを指す場合があります。高度経済成長期くらいまではこのオナモミが普通に見られていたので、真の「バカ」とは、このオナモミのことを指していたと思われます。
(生物担当学芸員)