この写真、小さい画面だとちょっとヘンな構図に見えますね。博物館正面入り口から中庭を撮影した写真です。
落葉樹であるコナラに、まだたくさん葉がついて残っています。中庭は風も弱いし、まだ落ちずにいられるのかな?と前庭へ出てみると・・
こちらにも、葉がたくさん残っている木がありました。すっかり丸坊主になっている木もあるので、この差はどうやら、風当たりなどとはちょっと違う理由がありそうです。
葉が落ちるのは、じつは風などの外的な力が主な理由ではありません。もちろん、引き金を引くことはあるのですが、ちょっとやそっとの風で、健康な葉が落ちることはまずありません。秋の終わりに落葉樹の葉が落ちるのは、葉柄の付け根と枝の間に「離層」と呼ばれるシャッターのようなものができるためです。低温や日照時間の減少で光合成の効率が落ちて、残った糖分や色素などを養分として枝の方へ移動させて、さあ、葉っぱはもう店じまい・・となったところで離層が形成されます。
もうとっくに紅葉も終わっているのに、こうして枝に残っている葉は、何かの原因で離層の形成が遅れているのか、弱いのでしょう。種類によっては、カシワのように春先まで葉が残る性質を持つ木もあります。でも、コナラは基本的にもう落ちていてよいはずです。なぜ離層の形成が弱いのかは・・わかりません。
こんなふうに古い葉がついたままでは、来年の新葉が出ないのでは・・と心配されるかもしれませんが、ご無用です。新芽は古い葉の付け根のちょっと上にできますし、じつはすでに、冬芽として新しい芽が出ています。
葉の落ちた跡から葉は出ないんですね。この冬芽はこのままじっと冬を堪えて、春に芽吹きます。その頃にはさすがに今年の葉は落ちているはずです。
(生物担当学芸員 秋山)