何かの暗号のようなタイトルですが、これは、カイコの変異型遺伝子の名称です。その変異型遺伝子を持つカイコがこれです。
おそらく、何も言われずに見れば普通のカイコとなんら変わりなく見えると思います。違うのは、うしろの方です。
じつは私も今回の日本在来原種を育てる中で初めて見たのですが、幼虫最尾部に茶色の皮膚硬化が見られるタイプの変異なのです。なんだかエビのしっぽみたいですね。さらにもう一つの特徴は、体が半透明だということです。言われてみれば、通常のカイコの強い白と比べると、ちょっと下が透けて見えているような色です。
タイトルのow btsとは、「waxy oily(ow ろうのように透けて見える)」と「brown tail spot(bts 茶色の尾斑)」というそれぞれの形質を表す略号なのです。
こうした変異形質は、遺伝子の変異が目に見える形として出ることから、遺伝学の材料としてとても重要です。蚕遺伝学の世界ではこれに「日本錦」という名前も付けられているそうです。
今回このような日本在来原種を育ててみて、改めてこうした優良教材を使った遺伝学の実験や実習ができるのではないかと考えています。カイコの世界、奥深いです。
(生物担当学芸員 秋山)