なにを今更、という感じですが、今朝羽化していた品種「乞食」の成虫を見て、ちょっと驚きました。
上の写真はオスですが、翅がきれいな三角形にほぼ伸びきっているのです。チョウやガならあたりまえの様に思えますが、カイコに限ってそうでもありません。すでに飛ぶ能力を失った昆虫なので、翅が縮れたり、うまく伸びきらないものが多いのです。下は、品種「青熟」のメス成虫です。
メスは体が大きいせいか縮れてでてくるのが多いのであまり比較になりませんが、乞食の成虫は、オスもメスもはばたくとなんだか飛んでいってしまいそうな感じです。江戸時代の浮世絵「蚕養草」(かいこやしなひそう 養蚕の教科書であったとされます)には、飛んでいるカイコの成虫が描かれています。本当に飛んでいたのかどうかはわからないのですが、そんなことを想起させるような立派な成虫でした。
繭の色の金色(こんじき)が転訛したうえに稚蚕期のおとなしさなどからこんな品種名になってしまったようですが、つくづく品種名は「金色」でよかったのに!と思います。でもとにかく、おもしろく美しいカイコです。
(生物担当学芸員 秋山)