昨日、このブログでアップしたコマクサは高山植物を代表する存在ですが、ほかにも高山植物と呼ばれるものがたくさんあります。寒冷な気候による土壌の凍結、積雪、強風などの理由から森林が形成できない(森林限界以上の)高標高地を植生から見て高山帯と呼びます。写真は北八ヶ岳天狗岳直下、天狗のお庭の森林限界付近のようすです。ちなみにこうした植生をハイマツ帯と呼び、研究者によっては高山帯と区別する場合もあります。
ハイマツの群落にコメツガが混じり、本来は高木になるオオシラビソがおかしな格好でまばらに立っています。
一年を通じて風がほぼ同じ向きで強く吹くため、枝が風下側にしか伸びないのです。
本州中部ではこのように、概ね標高2500m付近に、亜高山帯と高山帯の境目があります。天狗岳の肩あたりの森林限界内部のようすです。
亜高山帯を代表する高木の広葉樹であるダケカンバの幹がうねうねと曲がりくねっています。
亜高山帯のオオシラビソ林が標高が上がるにつれてダケカンバの比率が高くなり、さらにそのダケカンバも矮性化して人の背丈くらいになります。さらに上がるとハイマツ群落になり、場所によってはハイマツすらも群落を形成できないコマクサの生えるような真の(?)高山帯へと移行します。
ところで、天狗岳の高山帯で今回ちょっと衝撃的な植物に出会いました。
なんと、セイヨウタンポポです。在来のヤツガタケタンポポやタカネタンポポではなく、はっきりとセイヨウタンポポの特徴が見て取れます。風で飛ばされてきた種子がたまたま条件にマッチして開花したのでしょう。
標高が高くても、車道があったりして人工的な土地の改変が行われていれば咲いていることがありますが・・こんな原生の高山帯です。
これもまた限界を生き抜いた植物とはいえ、違和感は否めませんでした。
(生物担当学芸員 秋山)