今日は午後、市内の北里大学海洋生命科学部の特別講義ということで、2コマぶんお話ししてきました。
日本の細菌学の父にして学祖である北里柴三郎博士像と、真新しい一般教養棟です。(実際の講義は海洋生命科学部のMB棟で行いました)
ちなみに、「きたざとだいがく」と発音されることが多いのですが、正確には「きたさとだいがく」です。その経緯もまた興味深いエピソードですが、ここでは割愛します。
講義の1コマ目は「博物館の調査活動から見た神奈川の自然」として、地域生物相を調べるインベントリー調査が神奈川では伝統的に充実していることと、そこに地域博物館がどのように関わっているのか、神奈川県植物誌の事例を見ながらお話ししました。
1コマ目の最後に、「大学は地域インベントリーの構築にどのように関わることができるか」というちょっと意地悪な質問を投げかけました。2コマ目のはじめに、学生さんたちは戸惑いながらもしっかり誠実に答えてくれました。
2コマ目は「地域の鳥の記録を読み解く」として、日本野鳥の会神奈川支部が進める神奈川県鳥類目録作成の実績や経緯、そこから見えてきた野鳥の増減のようすなどをお話ししました。1コマ目に、標本主義をとることから実物を扱う博物館と相性のよい植物相の構築と、2コマ目に現代において標本主義をとることが不可能な鳥類相をあえて対比的に取り扱い、生物相の構築が地域の市民の英知とパワーによって成立している現状を紹介しました。
「神奈川には何種類の植物がはえているの?鳥は何種類いるの?」というシンプルな問いに対する答えを出すことがこんなにも大変で長い時間と労力がかかっているのか、ということが若い人たちに理解していただけたらいいなと思います。
(生物担当学芸員 秋山)