変異品種のカイコもすべて繭になりました。
秋蚕はやはり難しく、病蚕も多発して品種によっては半分も繭になれずに死んでしまいましたが、どうにかすべての種類が出そろいました。そんな中で最後に作ってくれた変わり種繭はこちら(右)です。
なにが変わり種か、ふつうに撮った写真だとよくわかりません。そこで、後ろからライトを当てて見ます。
こちらが、上の写真の左の繭、実用品種の「かいりょう・あけぼの」の繭です。まったく光を通しません。
そしてこちらが「lem Nd-s」という、カイコの体色がレモン色の品種の繭です。
中が透けて見えています。和紙で作ったランプシェードのようですね。
これは、カイコが吐く絹糸の構造の違いによります。絹糸は繊維本体である2本のフィブロインと、それをとりまくようにセリシンという糊成分が覆っています。下の写真は、「かいりょう・あけぼの」の繊維を300倍の顕微鏡で見たところです。ところどころ絹糸が裂けて、このように2本のフィブロインが見えています。
このセリシンが繭をガッチリと固める役目をしているのですが、lem Nd-sはセリシンがほとんど無い絹糸を吐くので、このように膜状の薄い繭を作るのだそうです。lem Nd-sの絹糸を光学顕微鏡で見てもあまり違いはわからないのですが、セリシンがまったく無いというより、量が著しく少ないような感じです(そもそもまったく無ければ繭として固まりませんね)。手で軽く押しただけでぺこっとへっこんでしまうので、ちょっとこわごわ扱います。
ところで、この前の記事でご紹介した天龍青白は、病蚕が少なくしっかり繭になってくれました。
なんとも言えない美しい繭色です。
これで、博物館の今年の養蚕は終了です。まだがんばって育ててくれている学校もあってそのサポートは続けていきますが、博物館で使ったまぶしや蚕座など、じっくりと殺菌処理をはじめようと思います。
(生物担当学芸員 秋山)