昨年12月11日(日)、生物学講演会「うな丼の科学 食卓を守る海洋生物学者の眼」を開催しました。講師は、北里大学海洋生命科学部准教授の吉永龍起さんです。
じつは吉永さんは、2009年に史上初めて発見されたニホンウナギの海洋での卵の、その発見の現場にいた人です。前半は、大海原での一粒の発見に至る経過や苦労、そして世界のウナギの中でニホンウナギとはどのような種なのか、といったダイナミックなお話でした。
後半は、いよいようなぎの蒲焼きのお話です。スーパーや外食チェーンで売られている中国産鰻製品のDNAからその種を突き止める実験を行ったところ、輸出が認められていないはずのヨーロッパウナギが高い割合で含まれていた、という衝撃的な結果が得られました。その後、吉永さんらの問題提起などもあり、その比率は現在はニホンウナギで占められるようになったそうです。
話題は食糧資源問題と流通の闇、メディアリテラシーにフェアトレード問題に至り、マリアナ海溝並みに深い内容でした。
ところで現在、小学校の国語の教科書に、吉永博士の恩師である「うなぎ博士」の塚本勝巳先生が書かれた文章が掲載されていることもあり、今の小中学生はみんなウナギの幼生の一形態であるレプトセファルスという言葉を知っているそうです。
吉永博士が持参してくれたレプトセファルスの標本です。
科学者の探究心と視点が、食文化の現代的な問題へ切り込むスリリングな講演会、まさしくあっという間の2時間でした。