難しいサクラ

博物館の敷地のサクラも満開となっています。周辺の並木とちがって、博物館のサクラの種類は、ソメイヨシノはごく少なくて、ヤマザクラと、さらにそれ以外のサクラばかりです。そのうちの1本が、駐車場の奥で咲いています。

美しく咲く問題のサクラ

見事に満開です。花と葉が同時に展開しているので、少なくともソメイヨシノではありません。葉と花が同時に開くヤマザクラかというと、花が白色で出始めの葉が赤くないのでそれもちがいます。そうすると、桜餅に巻く葉で有名なオオシマザクラかな・・と思って枝を取りよーく見てみると・・

左はオオシマザクラ、右が問題のサクラ

上の写真は、花の付け根の萼筒(がくとう)という部分を拡大したものです。右側が1枚目の写真の花で、左側は、同じ駐車場の別の株に咲いているものです。左側は、おそらくオオシマザクラと言って良いものです。しかし、右側には明らかに違う特徴があります。

萼筒を拡大したところ

さらに拡大すると、萼筒に毛がたくさん生えています。これはオオシマザクラには無い特徴なのです。では、もう一つのわかりやすい特徴の葉の縁を拡大して見てみます。

一つの鋸歯の中にもう一つ鋸歯があるのが重鋸歯

鋸歯(きょし=葉縁のギザギザ)の先が針状に尖っていて、重鋸歯(じゅうきょし=ギザギザが二つずつで一つの山になっている)なので、これはオオシマザクラの特徴です。さて困りました。葉はオオシマザクラを主張し、花は違うと言っています。
こうした場合、雑種を疑わざるを得ません。実際、サクラのなかまは数え切れないほどの種類と、それらの雑種があります。自然に交配することもありますし、園芸樹であるサクラは人工的に作られた雑種も多数あります。
結論として、博物館駐車場の問題のサクラは、オオシマザクラと何か別の品種(ソメイヨシノかそれに近いもの)が掛け合わさった雑種であるとしか言えません。このブログのタイトルはむしろ、「サクラは難しい」とすべきかもしれませんね。

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