こんなところも、在来種タンポポの特徴です

博物館の周りの地面は、春の花が咲きそろって地上の楽園のようです。
前庭で春先からがんばって咲き続けているのは、カントウタンポポ(在来種)です。

在来種のカントウタンポポ

外来種のセイヨウタンポポと違うのは、総苞(そうほう)という花を下支えする葉の外側が、反り返っていないことです。下の写真は、カントウタンポポとセイヨウタンポポの総苞の比較です。

総苞ががっちりまとまっている在来種のカントウタンポポ

外側の総苞が反り返っている外来種のセイヨウタンポポ

ところが、これらのタンポポの雑種が増えてきているのは、これまでも何度かご紹介してきました。雑種の多くはカントウタンポポそっくりの外見で、総苞がしっかりとまとまっています。

外見はカントウタンポポにそっくりな雑種のタンポポ

これじゃ見分けられない!ということで今、博物館では確実な識別をしたいときは、花粉を観察しています。でも、いちいち顕微鏡を見なくても、種子が実って綿毛ができてくると、だいたい見分けられる特徴があります。それは、種子がしっかり実っているかどうかという点です。下の写真は、カントウタンポポです。

カントウタンポポの種子(見やすいように、手前の種子を一部抜いています)

次の写真は、雑種のタンポポです。

雑種タンポポの種子

一見すると同じように見えますが、カントウタンポポの綿毛の内側をよく見ると、実っていない種子も多いので、ちょっと空いた感じがします。それに対して雑種のタンポポは、しっかり実ってぎゅっと詰まった感じです。
カントウタンポポの種子を無造作につまんで持ち上げると、実った種子と実っていない種子が半々くらいで取れます。

同じ花からとったカントウタンポポの種子。左が実っていて、右は実っていない

カントウタンポポは自家不和合性(じかふわごうせい)といって、他株の花粉がつかないとちゃんと受精せず、種子が実らない性質があるためです。たくさんの小さな花の集合体であるタンポポは虫が訪れて受粉をしますが、すべての花に他株の花粉がつくとは限らないので、こうしたバラツキが出るのです。それに対して雑種のタンポポはセイヨウタンポポと同じく、無融合生殖(むゆうごうせいしょく)という方法で花粉の媒介無しに種子を実らせることができるため、ほぼすべての花が種子になるのです。
もちろん、確率的にはカントウタンポポでも実りの良い花もあるはずなので確実な識別法ではありませんが、野外で簡易にできる識別方法の一つです。

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