カイコの飼育のクライマックスである繭づくりで、カイコが繭をつくる場所を「まぶし(蔟)」と言います。
近年はボール紙を格子状に組み合わせたものが一般的で、博物館でもダンボールで作ったものを容器にはめ込んで使っています。
ところが上の写真のように、もともとカイコは上へ上へと登りながら繭をつくる場所を探していきますから、まぶしへ入れただけでは、上を歩くばかりでなかなか入ってくれない個体もいます。近代養蚕では、日本で開発された「回転まぶし」という優れた道具が爆発的に普及したのですが、蚕室の無い博物館ではそんなに大がかりなことはできません。そこで・・
前の記事でもご紹介した食品パック式のまぶしを使うことがあります。ちょっと強引ですが、このパックに入れてふたをしてしまえば、半日くらいで繭を作り始めてくれます。これなら中身が見えるので、展示用にも都合がよいのです。透明ということであれば、ネット上などでもよく紹介されている塩ビパイプが良いのですが、コストがかかり、しかも基本的には使い捨てになってしまうのでもったいないように感じます。そこで食品パックです。そして、もう一つのコツは、底に尿抜きの穴をあけることです。
カイコは一生のうち2回だけ尿をしますが、その1回目が熟蚕期です(2回目は羽化直後)。これが食品パックの底にたまると、繭がよごれてしまいますし、ニオイもきつくなります。その穴の開け方は、下の写真のように必ず容器の内側から下へ開けます。
逆に外側から開けてしまうと、内側に土手ができてしまって尿がうまく排出されません。
穴を開けてカイコを入れたら、容器をティッシュペーパーなどの上に置きます。そうすると、尿をしてもうまく吸い出してくれます。
博物館でも今、このように展示してカイコの繭づくりを観察していただいています。
一昨日(6月30日)容器に入れたものは、もうこんなふうに繭がほぼ完成しています。
ちなみに、小学校などで飼育して数匹ずつ配られた場合は、トイレットペーパーの芯を半分に切ったこのようなまぶしで十分です。
カイコが一心不乱に糸を吐いて繭を作っているところを見ていると、なんだかカイコが神々しく見えてきます。食品パックを使った透明まぶしは当館オリジナルのアイデアです。カイコを飼育中の方はぜひ試してみて下さい。