博物館ではカイコの夏の飼育展示として、在来品種である小石丸(こいしまる)を公開しています。現在すでに5齢となり、モリモリとクワの葉を食べています。
眼状紋(がんじょうもん=目のように見える模様)がとても濃いのが特徴で、大正期くらいまでは日本の養蚕の主力品種でした。
展示はしていませんが、もう1品種、飼育しています。それはこちらです。
あれ!眼状紋が無い!
じつはこうした品種を総称して姫蚕(ひめこ)と呼びます。中国大陸で飼われているカイコの多くが姫蚕だそうです。家畜動物の外見は、それを育てる農家にとって「かわいらしい」ことが大きな要素になります。それが労働意欲につながり、ひいては産品の質も量も上がるからです。つまり、中国大陸では姫蚕をかわいいと感じ、日本では眼状紋の濃いものに愛着する傾向があるようです。とても興味深いですね。
さて、上の姫蚕の品種名は、「乞食(こじき)」と言います。ひどい品種名ですが、繭が黄色いことから金色(こんじき)→こじきとなってしまったそうです。なぜ繭が黄色いのかはまた改めてご説明しますが、どちらも同じクワの葉を食べます。
上の写真の左が乞食の繭、右が小石丸の繭です。乞食は姫蚕ですが、日本の在来品種です。繭がくびれたピーナッツ型となっているのは日本の在来品種の特徴で、これがもともとの日本の繭形となります。養蚕が盛んな地域にはたいてい繭最中(もなか)などの、繭にちなんだ和菓子がありますが、形がくびれているのはそのためです。