博物館のまわりのミズキやクマノミズキはいま、二度目の春を謳歌しています。
なぜ今ごろ春なのかというと、新緑瑞々しいはずの4月には、キアシドクガの幼虫に食べられてこんな状態だったからです。
葉脈の主脈(中央の一番太い葉脈)だけを残して食べ尽くされた葉は、下の写真のように休眠芽を揺り起こして成長させ、ふたたび展葉しました。
とはいえ、キアシドクガの大発生が5年も続き、木自体には相当ダメージを受けています。すでに枯れてしまった株もあります。
そんな中、異様なほど緑が復活している株が駐車場にあります。
一見、何事もなかったかのような復活のしかたですが、よく見ると通常のミズキの樹形ではありません。
なんと、枝がすべて枝垂れ(しだれ)状になっているのです。
枝垂れがなぜ起こるのかはよくわかっていません。ただ、通常の枝は全体として太陽光を効率よく受け取るために枝が上向きに伸びるよう、枝の付け根では上側の組織が強く太く成長します(上側の組織が下側を引っ張り上げることになります)。実際、年輪を見ると上側が広くなっています。それに比べて枝垂れの場合、年輪が上側も下側も同じ幅で、上側の組織が引っ張り上げる強度が無いために枝垂れることがわかっています。さらに、枝垂れの性質がある株に植物ホルモンの一種であるジベレリンを処置すると、枝垂れなくなることがわかっています。
どうやら、度重なる食害によってホルモンバランスが崩れたために、枝垂れてしまったのではないかと考えられます。ちょっと興味深い現象ですね。