博物館お隣の樹林地はいま、下草がきれいに刈り取られてスッキリとしています。
夏草が茂るようすは、それはそれで生きものの活力に満ちていてよいのですが、そのまま放置するわけにはいきません。なぜなら、だんだんと常緑の低木やタケ、ササなどが覆って暗く見通しの悪い林になってしまうからです。そうすると、この樹林の名物であるフデリンドウも消えてしまうのです。
さて、樹林地のはずれの刈り残された一画で、こんな花が咲いていました。
ハエドクソウです。
小さく可憐な花のわりに、名前がちょっと強烈ですね。これは、全草(特に根)に含まれる有毒成分を抽出して、ハエ取り紙にしみこませていた、あるいは全草を便所に投げ込んでハエの幼虫(ウジ)を殺していた、という利用方法からきています。
細長い花茎についた小さな花が風に揺られているのを見ると、そんな過激な利用方法をふと忘れそうになります。
こうしたハエドクソウの利用は知識としては持っていても、下水道や化学合成された殺虫剤が普及して年月が経ち、その効用が果たしてどれほどのものだったのか知りません。かつて実際にこの草を利用していたという話を伺ってみたいと、ふと思いました。