この5 年ほど続く博物館周辺の樹林でのキアシドクガの大発生は、森にいろいろな変化と影響をもたらしています。
5月から6月に開花するミズキは、キアシドクガの幼虫によって花芽ごと食べ尽くされてしまうため、ここ数年、秋に実る果実もほとんど実っていません。そのため、この時期に果実を目当てに渡ってくる冬鳥が樹林でほとんど見られない状況です。
冬鳥の渡来が遅れているわけではなく、その証拠に代表的な冬鳥のジョウビタキはもうやってきています。
とてもかわいらしい鳥です。地面に降りたり、低い枝にとまったりを繰り返しているので何をしているのかとよく見ると・・
どんぐり虫を食べていました!どんぐり虫とは、どんぐりの中身を食べて成長する昆虫の総称で、シギゾウムシのなかまや、一部の蛾のなかまが知られています。上の写真で食べているのは、シギゾウムシの幼虫です。
この時期、地面に落ちたどんぐりから出てきて、地中で蛹になるために地表を歩く、一瞬の隙にジョウビタキに捕らえられてしまったというわけです。
下の写真は、コナラのどんぐりの中に入っていた蛾の幼虫です。
ミズキの果実をアテにしていない冬鳥がこれから増えてにぎやかになるとよいのですが・・。
それからもう一つ、この樹林には大きな変化があります。キアシドクガに葉を食べられ続けたミズキは、さすがに樹勢が弱っているものが多く、枯れてしまった木も多く見られます。それが夏から秋にかけての度重なる台風で倒れ、さらに連鎖するように隣接していた木が倒れるなどして、樹林内にはギャップと呼ばれる空間がいくつもできています。
去年まではこんなぽっかりと空が見えていませんでした。ここはミズキとコナラ、そしてクヌギの大木が連鎖的に倒れた場所です。
こうしたギャップは、林内に太陽の光が差し込むためにこれまで育たなかった植物が芽吹いたりします。樹林が更新していく端緒となるのです。
これから樹林がどんな変化を見せてくれるのか、引き続き注目していきたいと思います。