博物館に植えられているクワの木は、カイコを飼育するためのものです。葉がだいぶ大きく広がってきました。
カイコのためなら、葉っぱさえたくさん展開してくれればよいのですが、クワの木には他にもいろいろな楽しみがあります。その一つはやっぱりクワの果実。初夏、プリプリの黒紫色に実る様子は、なぜか郷愁を誘います。
さて、そんな果実の様子は、すべてのクワの木で見られるわけではありません。なぜなら、クワは雌雄異株(しゆういかぶ)なので、木によって雌雄が分かれます。博物館で一番大きなクワの木は雌木(めぎ)です。花はこちらで、今、満開です。
花弁が無いので花らしくありませんが、カブトムシの角のような雌しべが、開花のしるしです。こうした目立たない花は風媒花(ふうばいか)のことが多く、花粉を風に運ばせます。実は、博物館でこれまで植えた木には雄木(おぎ)が見当たらず、100メートルほど離れた場所の大木の雄木が受粉の頼りでした。しかし今年、2年前に植えたクワの枝に花が初めて咲いたので、よーく見てみると・・
雄花です!雄しべをしっかり伸ばしていました。まだ木も小さくて花が少ないので、送粉(そうふん:花粉を送り出すこと)には十分ではないかもしれませんが、これでだいぶ隣の雌木の実りも良くなるでしょう。じつは毎年、開花の季節に雄木の花付きの枝を何本か切って、強制受粉させたりしていたのです。来年あたりはこの作業も必要なくなるでしょう。
クワの花が咲くと、そろそろカイコの準備を始めなくてはいけません。今年も博物館では、6月初旬からカイコを育てる予定です。