市立博物館は、平成7年(1995)11月20日に開館し、今年(2020年)で開館25年目を迎えました。正式に建設準備が始まったのは昭和56年(1981年)4月なので、開館まで実に14年7か月もの時間がかかりましたが、長い準備期間にも、調査や資料の収集など、建設に向けての諸活動が行われていました。
特に民俗分野では、地域の祭礼や行事をはじめ、そのほかにも畑や養蚕の作業、うどんや酒まんじゅう作り、社寺及び石仏など、さまざまな内容の調査とともに写真の撮影もしており、現在では見ることのできない貴重な写真が多く含まれています。
現在、この膨大な写真類の一層の活用を図るためにデータ化の作業を行っており、これから「職員ブログ」に、季節的な話題も含めながら写真を紹介していきたいと思います。さまざまなものを取り上げていく予定ですのでお楽しみに。
第1回目となる今回は、今から37年以上前の昭和58年(1983)3月5日に中央区淵野辺本町で撮影されたものです。保管されている写真は昭和57年からありますが、準備が始まった最初の頃のものは少なく、昭和58年3月はかなり早い時期に当たります。
ここで問題です。柄杓(ひしゃく)で茶色い液体を汲んでいますが何の作業を行っているのでしょうか。ヒントは今でも食卓に欠かせない調味料です。
正解は醤油(しょうゆ)作りです。かつて農家では味噌や醤油を自家で作りましたが、撮影した昭和58年当時では、自家で醤油しぼりをする家はかなり少なくなっていました。
醤油の原料は、小麦と大豆、塩、水で、炒った小麦にこうじ菌を混ぜ、蒸した大豆を加えた後、水を入れて一年間ほど仕込んでから、専門の業者を頼んで自家に来てもらってしぼりました。
醤油しぼりを専門にする人は各地にいて、醤油をしぼると独特の匂いがするため、近所でもどの家で醤油しぼりをしているかがわかりました。
こうした写真は、かつての生活において調味料まで自家で作っていたことを物語る貴重な資料と言えましょう。