ハイイロゴケグモ

ハイイロゴケグモ(メス成体)典型的な色彩の個体。斑紋がはっきりしない個体や灰色っぽいもの、ほとんど黒いものなど変異があります。

ゴケグモ属の一種。学名はLatrodectus geometrics。
体長10mm程度で不規則な網を張ります。コンクリートブロックの隙間、エアコン室外機の裏、ベンチや遊具の下、墓石の周囲等、人工物に好んで造網します。

コンペイトウ型の特徴的な卵のうと母グモ

「ゴケグモ」というと、1995年に関西を中心に発見が相次ぎ「毒グモ」としてテレビや新聞を賑わせたセアカゴケグモ(Latrodectus hasselti)を思い出す人もいると思います。セアカゴケグモは、今では関西などに定着し、他の地方でも散発的に確認されています。外国から輸入された貨物についていたものが物流に乗って各地に分散したと考えられています。幸いな事に、このクモに咬まれた事が原因で、深刻な健康被害を被ったという報告は今のところありません。
日本中がセアカゴケグモ探しに躍起になっていた同じ頃、横浜のコンテナ埠頭で発見されたのが、このハイイロゴケグモです。その後発見例も少なく、あまり話題になりませんでしたが、ここ数年、相模原市内での発見が相次いでいます。
気になる毒性ですが、セアカゴケグモより弱いというのが定説です。ただし、ゴケグモ属の毒は「神経毒」と呼ばれるもので、咬まれた場所以外にも症状が出るのが特徴です。全身症状に発展する可能性もあるので、咬まれない事が大切です。
まず、クモがいそうな場所には不用意に手を入れない事です。攻撃的な生き物ではないので、握ったり押さえつけたりしなければ、咬まれる事はまずありません。屋外で物陰を清掃する時や、物を拾い出す時には注意しましょう。履物に潜んでいた例もあるので、放置してあった靴等も要注意です。もし疑わしいクモを見つけたら市役所や博物館にご連絡ください。
万が一咬まれてしまった場合は患部を水ですすぎ、皮膚科や内科などの病院を受診しましょう。駆除には市販の殺虫剤が有効です。特定外来生物に指定されているので、生きた個体を移動したり、飼育することはできません。
と、色々書きましたが、相手の正体を知って、正しい対処ができれば、やたらに怖がる必要はありません(最近そんな話を良く聞きますね?)。
こうした外来生物は人間の活動と密接に関連して生息範囲を広げていきます。例えば物流に運ばれたり、他の生き物がいない人工環境へ進出するのはわかりやすい例です。博物館は、その記録を残す事で、私たちの暮らしや環境について考える事に貢献できるのではないかと思います。

腹部腹面の赤い「砂時計型」の斑紋がゴケグモ類の目印

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