街路樹の植込みや垣根、公園などの植栽木としてあまりにも有名なサツキツツジ(サツキ)が花盛りです。
小さくて濃い緑色の葉の上に、朱色やピンク色の花が目立ちます。
街中で見られるサツキはすべて植栽されたものですが、もともとの自生地の環境は意外と知られていません。それは、こんな環境です。
渓谷です。断崖絶壁の最下部、渓流の波しぶきがかかるような場所で、岩にへばりつくように咲くのが本来の姿なのです。
岩の割れ目や隙間に根を張り、厳しい環境に生育する性質のおかげで、コンクリートに囲まれた都市の環境でもたくましく開花するということなのでしょう。
上の写真は、相模原市緑区の道志渓谷の自生地で撮影したものです。実は、この場所が、地球上におけるサツキの自生地の東限(最も東側に位置する分布の境界)なのです。かつては相模川の小倉橋上流や、宮ヶ瀬渓谷にも自生していたそうですが、現在ではダム湖に水没して現存しません。県内で残る自生地はほぼ道志渓谷のみとなるため、サツキは神奈川県のレッドリスト(絶滅のおそれのある野生動植物のリスト)では絶滅危惧1A類と最も絶滅危険性の高いものとしてランクされています。どれだけ植栽のものが街中にたくさんあっても、レッドリストにおいて自生はまた別扱いとなるのです。
本来のサツキの姿を見ると、街中に咲くサツキを見る目が少し変わりそうですね。