この職員ブログNo.4「サツマイモ植え」でも記しましたが、5月から6月はかつての農家にとってもっとも忙しい時期でした。5月上旬から始まる春の蚕の飼育は、一か月もすると蚕が繭を作り、No.6「養蚕②」で取り上げたように、マブシから繭を取り出す作業があります。
畑では、前年の秋に蒔いた大麦や小麦の収穫がまっています。麦類は冬作として大量に作られている上、梅雨の時期で雨が降らない時に天気を見計らっての作業になるため、連日続く刈り取りから脱穀等の作業は大変な忙しさでした。
今回紹介するのも、教育委員会が制作した文化財記録映画第六作目の「相模原の畑作」の際に撮影したもので、次の三枚は小麦の刈り取りの写真です。
刈り取りには鎌を使い、一人が隣り合って植えてある二列を一度に刈り取り、そのまま並べておきます。そして、二抱え分を一束にまとめて家で脱穀しますが、なかなか家に持って来れない際には、畑の隅に五~六束をまとめて立てかけて干しておくこともありました(昭和62年[1987]6月17日・中央区田名)。
次の写真は脱穀の様子で、まず金属の刃を櫛(くし)状に並べたカナコキ(センバコキ)に麦穂を差し込み、手前に引いて籾(もみ)をこき落とします。次に、クルリボウと呼ばれる、回転する棒が付いた竿で籾を叩く「ぼうち」の作業を行って粒にします。写真は大勢の人数でのぼうちで、共同作業の際に皆の調子を合わせるために唄われたのがぼうち唄です。
クルリボウで叩いた粒は、フルイで振るった後に、内部の扇を回して風を起こすトアオリ(トウミ)にかけてゴミを飛ばし、実入りのよくないものを選別します。その後にムシロに広げてさらに干し、俵などに入れて保存しました(昭和62年[1987]6月28日・中央区上溝)。
ところで後半の写真では、作業をされている方が昔風の服装をされていることに気づかれたでしょうか。実はこれらは、上溝地区のぼうち唄保存会の皆様に再現をお願いして撮影したもので、映画の中ではここで紹介したさまざまな作業のほかにぼうち唄も唄われ、相模原の代表的な仕事唄として収録されています。
博物館では文化財記録映画だけでなく、実際の農家での脱穀作業の様子を撮影した写真も保管しており、次回はそうした写真を紹介したいと思います。
※文化財記録映画は博物館でビデオテープの視聴が、また、視聴覚ライブラリーでDVDでの視聴・貸し出しができますが、臨時休館等、ご利用に当たっては事前にHPなどでご確認ください。