「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」(No.21・盆行事②・盆棚)

前回、博物館では盆行事に関するたくさんの写真を保管していると記しました。今回はその中でも比較的古い時期に撮影された、盆棚を中心とした写真を紹介します。

 お盆では、家に帰ってくるご先祖様を祀るために、いつも位牌や故人の写真などを置いておく仏壇とは別に、盆棚と呼ばれる臨時の棚を迎え火の当日や前日に作り、送り火を焚いて先祖が帰るとすぐに片付けます。

 下の写真は、昭和61年(1986)8月・南区磯部の旧家の盆棚で、当家では普段、使用している机に新しいゴザを敷き、そこに位牌や果物などをお供えし、手前にはナスの馬などがあります。そして、仏壇を見ると、位牌はすべて盆棚に出されているため、空になっています。

 次は昭和62年(1987)8月・南区当麻で、ここでは床の間の空間を利用して盆棚を作っています。盆棚には、前側あるいは四方に竹を立てて竹や縄を渡し、ホウヅキや畑で穫れたものなどを吊り下げますが、ここではトウモロコシが下げられています。
 棚の上には、位牌や線香などのほかに、里芋の葉の上に米と刻んだナスを載せた「アライアゲ」と言われるものと、ミソハギ(盆に仏前に供える植物)の葉があります。前の磯部の写真でナスの馬の隣りにあったのも同じもので、盆棚へお参りする際には、水に付けたミソハギをアライアゲに振りかけて線香を灯します。

 同じく昭和62年(1987)8月・南区下溝で撮影した次の盆棚は、机ではなく大きな樽を使っています。かつては72リットルも入る四斗樽の上に、雨戸に使う戸板を置いたり、蚕に桑を与える時に用いる給桑台(キュウソウダイ)に戸板を載せて盆棚としました。
 また、この写真では棚の下にもお椀が置いてあるのが分かります。盆には先祖のほかに、亡くなった子どもや他では祀られない無縁の仏も祀り、ここに盆棚と同じものをお供えします。ただ、この家では、棚の下のお膳には箸はつけないとのことです。

最後は緑区相原で、前回記したように、相原地区は7月盆ですので昭和60年(1985)7月の撮影です。盆棚の正面に掛け軸があるほか、盆提灯がたくさん置かれています。実はこのお宅は、前年の盆から今年の盆までの間に亡くなった方があった新盆の家で、そのため軒先には盆提灯として用いられる岐阜提灯を吊り下げています。新盆の家には、特に親戚や近所の人がお参りに来ました。

 
 今回は、盆行事でよく見かけた盆棚の写真を紹介してきました。次回は、市内でも行う地区に地域差がある「砂盛り」を取り上げたいと思います。

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