博物館の前庭では今、ヤブランが淡い紫色の花をたくさん咲かせています。
ヤブランは、「ラン」と名前に付きますが、ラン科ではありません。
最近の図鑑では、キジカクシ科というちょっと耳慣れないグループに属します。かつてはユリ科でひとくくりだったものが、進化の過程に沿って系統分類を見直した結果そうなりました。キジカクシという種名よりも、学名のアスパラガスの方が馴染みがあるかもしれません。
いずれにしても、ヤブランは今、ランでもユリでもなくなったわけです。でも、ユリとの共通点はちゃんとあって、それは花びら(正確には花被片=かひへん)の数です。
6枚に見えますが、よく見ると、内側に3枚、外側に3枚あります。
今、街路や幹線道路の路肩などで激増している外来植物のシンテッポウユリをよく見かけるので、比べてみて下さい。内側の3枚を外側の3枚の花被片が包み込むようにしてラッパ状の花を作っています。
ラッパ状でわかりにくいかと思いきや、かえって内側外側の区別がよくわかります。シンテッポウユリは放っておくとどんどん増えてしまうので、花を摘み取って解剖してみてもよいでしょう。
さて、ヤブランは小さな6枚の花被片が、放射状に広がっています。このような花の形はランにはありません。おそらく、穂状に小さな花が並ぶ様子からランとついたのでしょう。
ミツバチやクマバチが花を訪れては体に花粉をたくさんつけていました。
秋には黒紫色の果実がたくさん実りそうです。