博物館お隣の樹林地のフェンスにはたくさんのつる植物がからみついています。その中の一つ、ヤマノイモです。
葉の下に、何かくっついています。これはむかご(珠芽)です。むかごは植物学の専門用語では、無性芽(むせいが)とも呼ばれます。花粉が葯(やく)について受精し、種子を作って繁殖したり、シダ植物などが精子と卵子を受精させて胞子体を形成し成長したりするような有性生殖で増えるのに対して、無性芽は自身のクローンを作って増える方法です。むかごをとって中を割ってみるとこんな感じで、のっぺりとしています。
これがドングリのような果実なら、子房(しぼう)や胚珠(はいしゅ)があるのですが、むかごにはそうした器官が見られません。
ヤマノイモはむかごの他に果実も作ります。植物の中にはこうして有性生殖と無性芽による増殖の両面で子孫を増やす戦略を持つものがあります。こちらのコモチシダも無性芽を葉の上にたくさん形成しています。
この子どもの葉がぽとりと地面に落ちるとそのまま根を張り、大きくなっていくのです。
また、コモチマンネングサという植物も、無性芽を葉の付け根につくり、同じように増えます。
植物の種名に「ムカゴ」や「コモチ」がつくものは、こうした無性芽をつける種類です。専門的な植物図鑑のさくいんで探すと意外とありますし、ヤマノイモのように、ムカゴやコモチがつかなくても無性芽を形成する植物もあります。ちなみに、ヤマノイモのむかごは昔からごはんと一緒に炊き込んで「むかご飯」として食べられています。ホクホクした食感がおいしいですよ。