博物館お隣の樹林地にはエノキが多くあります。その1本に、こんなこんもりとした植物が取り付いています。
ヤドリギです。「宿り木」と漢字があてられるとおり、寄生植物です(生物名に「やどり」と付く場合はたいてい寄生生物です)。ただし、ヤドリギは宿主(しゅくしゅ)であるケヤキやエノキの枝に根を食いこませますが、宿主から奪った水分や養分だけで成長するわけではなく、自ら光合成も行います。そのため、半寄生植物と呼ばれています。
さて、このヤドリギは今が果実の熟す季節です。黄金色に光る果実がたわわに実っています。
ヤドリギの果肉は強い粘性を持っていて、潰すとねっとりと糸を引きます。そのためか、こんなにたくさんの果実をつけるわりに、ある野鳥以外にはあまり好まれません。その野鳥とは、レンジャク類(ヒレンジャクとキレンジャク)です。独特の美しい色合いと冠羽(かんう)がオシャレな鳥です。
レンジャク類はヤドリギの果実が大好物で、ヤドリギを食べると、フンもこうして糸を引きます。そうしてフンと一緒に排泄された種子が別の枝に張り付き、そこで芽生えるというわけです。
レンジャク類は冬鳥として日本に渡来しますが、その数は年によって大きく増減します。北方の食物が少なくて枯渇(こかつ)すると南下してきますが、ほとんど姿の見られない年もあります。今年はすでに神奈川県内でも観察されているので、相模原市内ではいつ見られるか、心待ちにしています。ただ、市内ではヤドリギがまとまって生えている場所があまり多くありません。周辺地域でヤドリギを食べつくして、他の果実(例えばヤブランやピラカンサなど)をしかたなく?食べるころ、市内でも見られます。3枚目の写真も、昨年の3月に相模川沿いで見られたヒレンジャクです。
博物館周辺のヤドリギもきっと、仲間を増やすチャンスとなるレンジャク類の飛来を心待ちにしているはずです。