3月の祝日である春分の日を中日として、その前後の3日間ずつの計7日間が春のお彼岸です。もちろん秋にも、秋分の日を中心とする彼岸があります。
彼岸には墓や寺参りをするほか、「入りボタモチに明け団子、中の中日小豆飯」などと言い、彼岸入りの日にボタモチ、彼岸明けに団子、中日に小豆飯(あるいは赤飯)を作って供えたりしました。
春秋の彼岸には念仏を唱える地区も多く、彼岸の入りと中日、明けの日の彼岸中に三回集まって念仏講を行うことが広く見られました。今回は念仏講の写真を紹介します。
最初の写真は、中央区上溝・田尻公会堂での念仏講です(昭和60年(1985)3月22日)。念仏講は女性が行い、公会堂に集まった方々が丸く座って念仏を唱えています。
この時に飾る掛け軸のほか、唱える念仏が黒板に記されています。また、右側の時計は8時15分を指しており、ほとんど夜に行われました。
前の写真の黒板には、まず最初に「数珠くくり」と書かれており、大きな数珠(じゅず)を全員で回しているのが分かります。
そして、六番目に「お茶あみだ様」とありますが、これが始まる前に掛け軸にお茶と線香を上げ、「お茶あみだ様」が終わると、その茶をおろして各自の茶碗に少しずつ足して飲みました。
次の写真は南区下溝・古山での念仏講です(平成14年[2002]3月17日)が、実は今回の念仏講によって解散することになり、最後の念仏講として写真を撮影させていただきました。
ここの念仏講は自宅で行われ、集まってきた方々がまず掛け軸を拝みます。
全員が集まったら、両脇にそれぞれ座って念仏を唱えていきます。
この念仏講で用いられた三点の掛け軸は、最後の念仏講の終了後に博物館に寄贈されました。博物館では大切に保管するほか、これまで何回か展示もしています。
職員ブログNo.46の初午では稲荷講について触れており、各地で行われていた稲荷講や念仏講などの写真を保管していますが、こうした講なども現在ではめっきり見られなくなりました。今後も地域の中で、人々が共同で行ってきたさまざまな行事や作業について紹介していきたいと思います。