雑木林に咲く代表的な野生ランであるキンラン。近年は生育に適した、林内の明るい雑木林が少なくなり、加えて花が咲くとすぐに盗掘にあってしまうことが多く、姿を消してしまうのではないかと心配になるくらい数少ない植物でした。それが、一昨年あたりから目立って開花する株が増えて、昨年は博物館近くの木もれびの森でも大量に開花しました。そして、博物館のお隣の樹林地でも昨年、人目につかないエリアでひっそりと咲いているのを発見しました。今年、同じ場所で昨年よりもたくさんのキンランがつぼみをつけています。
名前の由来となる黄色い花(つぼみ)がだいぶ目立っているものもあります。キンランはあまりはっきりと花弁を開かず、おくゆかしく咲きます。ちょっと口を開く程度ですが、あと数日で咲くでしょう。
それまで、博物館周辺のそのエリアではキンランを確認したことはありませんでした。おそらく、花を咲かせずにひっそりと葉だけを伸ばしていたものと思われます。それが、8年ほど前から続いたキアシドクガの大発生により、食樹であるミズキの木が傷んで枝を落としたり、木が倒れたりして林内が開けて明るくなる場所ができました。そんな場所のキンランが、ここぞとばかりに開花しているのでしょう。
大きな騒動になったキアシドクガの大発生の他、ここ数年はカシノナガキクイムシによるコナラの枯死も目立っています。そんな自然のリサイクルを知ってか知らずか、キンランは虎視眈々と開花のタイミングを狙っていたのかもしれません。風前の灯かと思われた野生ランの、意外なしたたかさを見たような気がします。
ところで、雨模様となった4月13日のフデリンドウです。
これは開花前のつぼみではなく、晴れていないために花を閉じた状態です。晴れて気温が上がらないと、花粉を媒介してくれる昆虫も飛びません。そんなときには昆虫レストランを閉店して、しっかり花を閉じて雌しべを守ります。フデリンドウ好きの人間にとって、雨の日はサービス無し。こちらもなかなか、したたかな戦略ですね。