5月9日(日)まで、当館では考古企画展「変化の時代を生きた縄文人―相模原市域の縄文時代中・後期文化―」を開催しています。展示期間中の毎週火曜日に「今週の一品」と題して、展示資料の中から学芸員が選りすぐった一品を紹介しています。
展示期間も残りわずかとなりましたが、最後に取り上げるのは、大島下台(おおしましただい)遺跡で発見された縄文時代後期の埋設土器です。
大島下台遺跡は緑区大島の相模川沿いに位置する縄文時代と平安時代の遺跡で(地図を表示する(外部リンク))、紹介する土器は、平成11年(1999)に行われた発掘調査により、人為的に掘られた径87cm程の穴の中に据えられた状態で発見されました。
土器の大きさは、口径40cm・高さ46cmと大型で、口の部分に大きさの異なる5つの突起を持ち、胴上半部には横方向に連続する逆S字状の渦巻文様が描かれています。この土器は、その特徴から今から約4,000年前にさかのぼる縄文時代後期前葉の堀之内式(ほりのうちしき)土器であることがわかっています。
土器内部からは何も出土しておらず、その用途は明確ではありませんが、後期の初頭から前葉にかけて、土器の中に小さな子供を葬った例や、大人の再葬骨(いったん埋葬した遺体を掘り出し、改めて埋葬することを再葬(さいそう)と言います。)を納めていた例が千葉県や埼玉県で確認されていることから、この土器も遺体や遺骨を納めていた甕棺(かめかん)であった可能性が考えられます。通常、骨は土の中で分解されてしまうため、その証拠をつかむことは難しく、用途が不明確なものは「埋設土器」などと表現されているのが実情です。
今回紹介した資料は、考古企画展「変化の時代を生きた縄文人-相模原市域の縄文時代中・後期文化-」、「5 豊かな恵みを願って」のコーナーで展示しています。