春はなんとなく、黄色い花が目立ちます。タンポポをはじめ、たくさんの花が一斉に咲くからでしょうか。ただし、これはあくまでも感覚的なものです。ある観察会で、種類に関係なく、咲いている花の数を色別に記録してみたことがあります。すると意外なことに、赤や紫系や白も多く、黄色が特に多いという結果にはなりませんでした。
それでも、初夏へと移り変わる今ごろの季節は、花の色合いも変化しているように思えます。この季節は、白い花。博物館のまわりでも次々に咲きだしました。こちらは、ガマズミです。
ちょっと薄暗い林内で灯(ともしび)のように咲きます。
こちらはエゴノキです。大木になることもなく、葉や枝ぶりにあまり特徴がないため、ふだんは目立たない木です。しかし、花の季節には存在感を示します。
下へ垂れ下がって咲く花は見上げると枝いっぱいに付き、時間が経つと躊躇なく地面へ花を落とします。エゴノキの下には花のじゅうたんが敷きつめられることになります。
こちらはスイカズラです。いつの間にか木々に巻き付いて伸び、初夏から梅雨のころ、純白の花が咲いてその存在に気づきます。
花は時間とともに淡いベージュに色が変化し、たくさんの甘い蜜を出すことから、昆虫たちに大人気となります(かつてこの花の蜜を子どもたちが好んで吸ったことから“吸い葛(かずら)”の名が付いたと言われています)。
今の季節に白い花が目立つというのも一種の錯覚なのですが(地面を見れば、色とりどりの花が咲いています)、そう感じることで、自分なりに季節に区切りをつけているように思えるのです。