職員ブログでは、これまで「彼岸念仏」(No.50)や「念仏と地蔵」(No.53)など、何回か念仏講のことを取り上げてきました。女性を中心に特定の日に集まり、仏の教えなどをゆっくりとした節回しで歌うように唱えていく念仏講は各地で行われていました。
こうした念仏講を紹介したのが、平成5年(1993)度制作の第12作目文化財記録映画「庶民のいのり―相模原の念仏講―」で、特に緑区相原の三地区について、その曲目の違いなどにも注意して撮影されています。
最初の写真は相原・南村(みなみむら)講中の念仏講で、参加者は揃いの着物を着て、大きな数珠(じゅず)を回しながら念仏を唱える、いわゆる「百万遍(ひゃくまんべん)念仏」をしています。また、二枚目の写真は茅戸(かやと)講中の家見(いえみ)念仏です。新築された家があるとお祝いに行う家見念仏は、No.53でも紹介しました。
映画では、実際に念仏を唱えているところだけではなく関連する内容も撮影しており、次の写真は念仏講の開始に先立ち、講費(参加費)を払っています。また、二枚目は、念仏講が終わった後で、次の会場となる家(宿<やど>)に講で飾る掛軸などを受け渡しているところです。場所はいずれも大門(だいもん)講中です。
また、相原地区以外として、毎月7日に南区古淵の大日堂(だいにちどう)で行われるものは、近所の人だけではなく、例えば町田の方からも参加する人があって広く信仰されてきたと言われています。ここでは、南北朝時代にこの地で起きた戦いで亡くなった死者をとむらうためと伝えられています。
南区当麻の無量光寺(むりょうこうじ)は、時宗(じしゅう)の開祖である一遍(いっぺん)上人の弟子である二世真教(しんきょう)が創建した古刹(こさつ)です。当寺で毎年10月23日の開山忌(かいざんき)に行われる双盤(そうばん)念仏も撮影されており、男性が双盤鉦を叩きながら念仏を唱えます。
最初の写真では四つの鉦(かね)が叩かれており、次の写真は双盤鉦とともに太鼓が見えます。なお、開山忌には、平成初期に始められた女性による踊り念仏も行われており、その様子も撮影されました。
地域の人々が集まって特定の神仏を祀り、信仰的な行事を伴う講は市内各地で行われ、その中でも念仏講は比較的遅くまで残っていましたが、ブログNo.50で平成14年(2002)3月で解散した念仏講を紹介したように、現在ではかなり少なくなっています。この映画は、代表的な講の一つであった念仏講についていくつかの地区の例を取り上げ、その比較を通じて実施する組織の違いなど、それぞれの特徴を捉えることを狙いとしています。