給桑開始から27日目の6月28日、1週間モリモリ食べ続けたカイコの多くは、食べるのをやめて、時々首を振っています。体も一回り小さくなり、黄色っぽくなりました。
熟蚕(じゅくさん)です。
熟蚕とは、繭をつくる準備ができた状態のカイコのことです。それまで飼育容器にふたをしなくても決して逃げなかったカイコが、熟蚕になると、容器の隅や縁を歩き回ります。こうした行動をしているカイコは、蔟(まぶし)へ移動します。蔟とは、カイコが繭を作るしきりです。博物館では板ダンボールを切って格子にしたものを蔟にしています。養蚕農家では、熟蚕のカイコを蔟へ移す作業のことを上蔟(じょうぞく)と呼びます。
早速、飼育展示も蔟の展示へ切り替えました。
上蔟から1日経ったカイコは、すでに繭の形ができています。まだ薄く、中が少し透けています。あと1日、つまり、作り始めてから丸2日で繭は完成します。
こちらは、バックライトを当てているので、中でカイコが動いているのがわかります。
繭が完成すると、さらに2日で蛹(さなぎ)になります。それから10日、つまり、繭を作り始めてからちょうど2週間で成虫に羽化します。
ただし、養蚕は繭の収穫が目的なので、繭が完成して数日したところで乾燥させます。博物館では、観察と展示のために数個の繭を残して成虫に羽化させます。飼育展示のしめくくりとして、成虫もこちらへ展示する予定です。