「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」(No65・三匹獅子舞)

当館は開館する平成7年(1995)11月までに、14年7カ月もの長い建設準備期間があったことは本ブログにも記してきましたが、準備の間にはテーマを決めた調査も実施していて、これまでにもそうした川漁や鍛冶屋などの写真を紹介してきました。今回取り上げる獅子舞(ししまい)もその中の一つです。

市内で行われている獅子舞は、「一人立ち三匹獅子舞」と言われ、一頭の獅子を一人で担当して、それが三匹で一組となって踊るものです。緑区鳥屋・大島・下九沢と、中央区田名で行われており、調査は隣接する愛川町三増(みませ)を含めた五か所において、平成元年(1989)度から5年(1993)度まで実施されました。なお、鳥屋は調査当時は津久井町でした。

最初の写真は鳥屋で、獅子頭が飾られていますが、前にあるのが現在使われている獅子頭、奥側が元々使われていたものです。この獅子頭には、17世紀に獅子舞を当地に伝えたとされる僧侶「円海」の名が彫られており、古くからのものとされています。二枚目の写真は諏訪神社の祭礼での獅子舞の様子で、ムシロの上で並んで踊っています(平成元年[1989]8月10日)。

次の写真は愛川町三増の前日の状況で、花笠を用意したり、練習をしているところです。調査では祭りの場での獅子舞だけでなく、準備や後片付けを含む一連の流れを記録しています(平成2年[1990]7月14日)。

田名八幡宮の獅子舞は、男獅子(おじし)と女獅子(めじし)、子獅子(こじし)の三匹の獅子が出て、特に後半に女獅子を隠すような場面があります。この「女獅子隠し」は各地の三匹獅子舞に見られるものの、隣接する大島や下九沢では行われません(平成3年[1991]9月1日)。

「三匹獅子舞」と言っても実は場所によって、獅子以外のものが一緒に踊ります。下九沢・御嶽神社では、鬼の面をかぶった岡崎(おかざき)が付き、写真では、土俵の中の三匹の獅子とともに向かって左側に岡崎が写っています(平成4年[1992]8月26日)。

最後の写真は大島・諏訪明神で、ここでは三獅子とともに、鬼と天狗(てんぐ)・岡崎によって構成されています。三匹の獅子が踊るちょうど真ん中奥に鬼、向かって右側に岡崎が見えています。なお、天狗は、獅子舞が始まる前に土俵のしめ縄を切ったりする役目で、一緒に踊ることはありません(平成5年[1993]8月27日)。

実は「一人立ち三匹獅子舞」は、全国的には東北地方南部から関東地方に分布していて、相模原市はこの分布の南限に当たっており、地域の民俗を考える上で重要なものの一つと考えられています。                                また、この調査では、各地の獅子舞の伝承や当時の状況を丁寧に調べて報告書にまとめており、例えば実施日が変更されるなどの変化も生じている現状において、その意味でも貴重な成果と言うことができます。なお、それぞれの獅子舞の調査報告書は博物館で読むことができます。

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