博物館の駐車場を歩いていると、木の枝が風に揺られるのとはちょっと違う動きで、ユサユサと揺れました。小枝にそっくりな、ナナフシモドキが歩いていたのです。
“ナナフシのニセモノ”のような名前ですが、これはナナフシ(七節)がもともと「節くれだった木の枝」を指す言葉で、これに擬態(ぎたい)してそっくりだから「七節もどき」となりました。今はナナフシの方が昆虫の一般名称として残った結果、なんだかニセモノっぽい名前になってしまいました。一般にナナフシと言えば、本種や、近縁のエダナナフシのことです。
ところで、ナナフシの眼はこっちを凝視(ぎょうし)しているように見えます。
こちらが正面にいても、横にいても、瞳孔(どうこう)がこちらを見ているように見えます。
でも、これは別にこちらを見ているということではありません。ナナフシなどの昆虫の多くが複眼(ふくがん)です。一つ一つの眼はストローのような構造で、中心から放射状に配置されています。自分がいる方向の部分だけストローの奥を覗(のぞ)くようになるため、暗く見えているというわけです。これを偽瞳孔(ぎどうこう)と言います。
頭ではそういう理論だと納得しているのですが、見れば見るほど、こちらを見ているとしか思えない眼ですね。
偽瞳孔は、カマキリなど多くの昆虫で見られます。今度カマキリに出会ったら、じっと見つめ合ってみてください。