今年のカワラノギク

10月6日、相模原市内の相模川に生育する絶滅危惧植物、カワラノギクの生育状況を調査しました。大きな保全地があるこの河原では、河川管理者である神奈川県のご協力のもとで保全地が作られ、「カワラノギクを守る会」や博物館が、他の植物を除去するなどの保全活動を行っています。
今年も保全地では順調に花芽をつけていました。

カワラノギクのつぼみ

今月末から来月初旬くらいが見ごろとなりそうです。
ただ、今回の調査では、人間の管理下でない場所、つまり保全地の外でどれくらい生育しているかを見て回ったのですが、残念ながらほとんど生育していませんでした。ここ数年、大きな冠水(かんすい:水位が上がって河原が水をかぶった状態)が無く、他の植物の生育が著しいことと、縦横に自動車の通った痕があり、カワラノギクの生育しやすい丸石河原があまり見られないことが原因と思われます。
保全地でも、草刈りをしない場所はイネ科の外来種であるシナダレスズメガヤが茂ってしまい、カワラノギクを圧倒しています。

左側が草刈りをしている保全地、右側がシナダレスズメガヤの群落

カワラノギクは、河原の砂礫(されき)が流失と堆積を繰り返し、ほかの植物があまり生えていない河原に群落を作ります。河原が安定して緑が濃くなると、カワラノギクにとっては生育しにくい環境となってしまうのです。
まだまだ、カワラノギクの保全には人間の手が必要な状況であることがわかりました。
ところで、調査をしていると、茂みからガサガサと大きな音がしました。よく見ると、ホンシュウジカでした。

茂みの向こうでこちらをうかがうホンシュウジカ

以前から、足あとがあったのでいるのだろうと思っていましたが、この河原で鉢合わせるのは初めてです。市内では、これまでシカが確認されていなかった地域にも少しずつ分布を広げているようです。シカの存在もまた、カワラノギクの生育に影響を及ぼす可能性があります。引き続き、河原の環境を注意深く見守っていきたいと思います。

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