れまで数回にわたり伝説をテーマに取り上げてきましたが、また以前のようにいろいろな内容の写真を紹介していきたいと思います。
市内緑区大島から中央区田名地区には、湧き水を池状に溜めた「ヤツボ」と呼ばれるものがあります。ヤツボは崖(がけ)になっているところから湧き出した水を利用したもので、かつては生活用水をはじめ、水量が多いヤツボでは水車が設置されたりしました。
大島地区では、壺(つぼ)状の形をしていて、八つあることから「八壺(ヤツボ)」と呼ばれるようになったとも言われますが、実際には大島から田名にかけての崖沿いに、それ以上の多くのヤツボがあったことが知られています。
最初の写真は大島・中ノ郷(なかのごう)のヤツボで、崖の中腹に水が湧いていて急斜面を下ったところに見られます(平成11年[1999]2月3日撮影)。
大島・水場(みずば)のヤツボはほぼ昔の形態を残しており、地域の神社である日々(ひび)神社の御神水としても利用されたと伝えています。ヤツボには祠(ほこら)があり、竜が剣に巻き付いた倶利伽羅竜王(くりからりゅうおう)がまつられています(平成13年[2001]4月11日)。
大島・古清水上組(こしみずかみぐみ)のヤツボも、現在はヤツボの保護と安全のために石が敷かれて水深が浅くなっていますが、ほぼ当初からの形が保たれています(平成26年[2014]7月19日)。
先の水場のヤツボでは倶利伽羅竜王がまつられていますが、ヤツボは水が湧くところにあり、水源をまもる神がまつられることもありました。次の写真は大島・古清水の横穴状に掘られたヤツボで、小さな祠が見えています(平成29年[2017]1月16日)。
ヤツボは田名にもあり、望地(もうち)地区の相模川へ下る坂の途中にあるヤツボもやはり池のように水を溜めています(平成20年[2008]11月2日)。
また、それほど大きくはないものの水が湧いている場所を見つけることもできます。写真は田名・半在家(はんざいけ)です(平成29年[2017]5月23日)。
一般に市内の相模原地域は台地の上に集落が広がり、かなり深く井戸を掘らないと水が出ないなど、水の確保に苦労する地区もありました。それでも地域によってさまざまな方法で水を得ており、特に大島の中ノ郷・水場・古清水上組の三つのヤツボは、古くからの形態を良好に残すものとして市登録史跡となっています。