写真は、ワカバグモのオス。博物館の敷地内で撮りました。都市部から山地まで広く分布し、草や木の葉の上を徘徊しているところをよく見かけるクモです。体長はメス9-12mm、オス7-11mm。オスの成体は頭部前方や第1・2脚の付け根などが赤くなります。メスは全身緑色なので、その印象でいると「なにこれ?新種?」みたいな勘違いをする事になります。
野外での写真があまりうまく撮れなかったので、採集して館内で再度撮影。
さて皆さん、何か変だと思いませんか?
そうです。脚の数が変です
クモの脚は8本。この個体は7本しかありません。
そして、左右の第1脚(一番前の脚)を比べると、長さが違います(左の方が短い)。
クモは脱皮して大きくなりますが、ケガなどで脚を失っても、次の脱皮までに新たな脚が生えてくるのです。
ただし、元と同じ長さという訳にはいかないらしく、こんな風に長さが違ってしまうのです。
現在、この個体は右の第2脚を失っています。成体なので、もう脱皮はしません。ですから、残念ながらこちらは3本のままという事になります。クモを捕まえると、脚が少なかったり、左右の長さが違うことはさほど珍しくありませんので、ケガをする事は比較的ありふれたことのようです(ケガをすると「自切」といって、自分で噛み切ってしまう事もあるそうです)。
こんなふうに多少脚が減っても平気だったり、再生しているのを見ると、やっぱり我々人間とはずいぶん違う生き物なのだな、と改めて思います。(学芸班 木村)
正面から見たところ。実は歩くための脚の前にもう1対「肢」があります。昆虫で言う「触角」のようなもので「触肢」と言います。クモのオスの触肢の先は精子を保持し、メスに送り込むための複雑な形をした器官になっており、外見も丸く膨らんだ形をしています。上の写真とも見比べてみてください。