「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」(No90 小正月のものつくり)

前回まで数回にわたり、正月14日頃の小正月(こしょうがつ)に各地で行われる「どんど焼き」「団子焼き」を紹介してきました。市内でも小正月には他にもさまざまな行事が行われており、本ブログでも、これまでNo.41「アワボヒエボ」、No.42~43「団子飾り」を記しています。

アワボヒエボや繭玉団子は市内各地で作られていましたが、今回取り上げるのは津久井地域で見られたもので、県内でも特徴があるとされています。博物館では、実際にいくつかのものを作っていただき、その様子を撮影するとともに実物資料を収集することも行ってきました。

次の写真は緑区佐野川で、花のように削った「削りかけ(ケズリカケ)」と言われるものを樫(かし)の木に飾っているところで、削りかけは豊作を願って作られました(平成元年[1989]1月10日撮影)。                  

そして、削りかけとともに「俵」(米と粟(あわ)の俵を六つずつ)や、鍬(くわ)・鎌(かま)などの七種類の「農具(ノーギ)」のミニチュアなども同じ方に作っていただき、保管しています。                  

 

また、これらのノーギや俵などは、隣接する多摩地域の西多摩などでも見られることが知られており、関連資料としてやはり地元の方にお願いして作っていただいたものを収集しています。写真は八王子市小津町でのノーギ作りで、ここでは臼(うす)と杵(きね)、鍬のほかに、大きな草刈りの鎌などを作ります(平成元年[1989]1月30日)。                 

 

全国的に小正月にはさまざまな行事があり、繭玉作りや削りかけ・俵・ノーギなどはその年の農作物の豊作を願うもので、そうした性格を持つ行事は各地で行われています。

一方で細かく見ていくと行事の有無には地域差があり、分布の上での広がりを捉えていくことも必要です。このような地域的な特徴を具体的に表すものとして、博物館保管の実物資料を位置付けることができます。

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