当館特別展示室では、1月29日(土)~3月13日(日)の期間、考古企画展「古代相模原台地の開発」を開催しています。
今回の展示では、古墳時代から平安時代にかけて行われた市内相模原台地の開発や人々の生活をテーマに、当時のムラから出土した土器や農具などの生活用品のほか、仏教など信仰に関連した遺物などを展示しています。
前回は、展示品の中から、畿内産土師器(きないさんはじき)を紹介しましたが、今回は鉄製の鎌や鋤(すき)をご紹介したいと思います。
こちらの写真はⅠテーマ「開発の波」で展示している中央区田名に所在する田名塩田原(たなしおだはら)遺跡から出土した鉄製鎌の身(刃)です。平安時代の竪穴住居跡から出土しました。曲刃の鎌で、現代の私たちが使っている鎌にも近い形をしたものがあるかと思います。ただし、現代の鎌は、身の根元にある茎(なかご)を柄に差し込んで固定していますが、市内で出土するこの時代の鎌は、茎がなく身を柄にあけた溝穴に通し、根元を折り曲げて固定するものであったようです。
鎌は現代の私たちと同じように草刈りや稲の根刈りなど、さまざまな農作業に使用されていたものと考えられます。
次の写真は、鋤先(すきさき)と呼ばれるものです。
上段は南区当麻に所在する古墳時代の谷原(たにはら)2号墳から出土したものです(Ⅰテーマ「開発の波」)。また、下段は緑区川尻に所在する風間(かざま)遺跡の平安時代の竪穴住居跡から出土したものです(Ⅲテーマ「古代集落の生活」)。鋤は刃先を土に差し入れて土を掘り起こす道具で、鋤先はU字形をした鉄製の刃の部分です。木製の柄に装着して使用しました。農作業や土木工事に用いられたと考えられますが、谷原2号墳から出土したものは古墳の墳丘から出土しており、古墳を造る際、使われたものかもしれません。
なお、同じく土を掘り起こす道具として鍬(くわ)がありますが、鋤先と同じU字形をした刃が装着されており、両者の刃先については区別がなかったとも言われています(企画展では発掘調査報告書の記載に従って区分しました)。
こうした鉄製の農具からは、高燥な原野が大部分を占めていた相模原台地を切り開いた先人たちの苦労が偲ばれます。ぜひ展示室で実物をご覧ください。
なお、ギャラリートークを2月27日(日)、3月13日(日)に開催します。いずれも午後2時から30分程度です。こちらもお気軽にご参加ください。