「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」(No98 糸取りから機織りまで)

本ブログのNo.60では、昭和60年(1985)度に製作した文化財記録映画「さがみはらの機織り」を取り上げましたが、博物館では繭の糸取りから機織りまでの工程について、映画とは別に写真撮影をしています。

中央区田名にお住まいだった大谷タケさんは、大人になってから機織りを始め、身近な方に糸取りの方法を習い、機織りは工房に習いに行って覚えました。そして、自分や家族の着物を作ったり、布や小物類を親しい人に配るなど、楽しみながら機織りをされていました。

以下の写真は、平成9(1997)年6月10~11日にご自宅の作業場において、大谷さんが行なっていた一連の作業を撮影させていただいたものです。

最初の写真は製糸で、繭を煮て座繰り(ざぐり)と呼ばれる道具で糸を取っています。ちなみにこの座繰り機は博物館に寄贈いただき、現在、常設展示室で展示しています。                 

大谷さんは、糸もご自分で草木染をして、いろいろな色に糸を染めていました。

糸から布を織るにはいくつかの作業が必要です。次の写真は整経(せいけい)で、たて糸(経糸)の準備です。糸を整経台に掛け、織るものに合わせて糸の長さと必要な本数を決めます。                

次に、仮筬通し(かりおさどおし)で、糸の配列を決めて織り幅を整えます。                

たて糸は、機織り機にセットする緒巻き(おまき)に巻き取っていきます。                

筬(おさ)通しは、筬の櫛(くし)の間にたて糸を一本ずつ通す作業です。               

そして、いよいよ機織りで、たて糸の間によこ糸を入れて織り上げていきます。               

この時には、くず繭から作る真綿(まわた)作りもやっていただきました。真綿を枠にひっかけて伸ばしていくもので、昔は布団の回りに入れて綿が寄らないようにしたり、寒い時には真綿を服の下に仕込んだりしました。

最後の写真は、平成9年(1997)7月13日に博物館で実施した「機織り実演会」です。博物館では平成8年から16年まで、大谷さんにお願いして機織りや糸取りの実演や体験を行っており、今回の写真もその企画や実施のために撮影させていただきました。                 

ここで紹介した写真は、機織りをするために必要な作業の一部ですが、実演会当日も、そうした会場では行えない諸準備の様子を写真パネルで紹介しました。撮影当時に実際に個人で糸取りや機織りをされている方はなく、その一連の工程を撮影できたことと、何より実演会を開催できたことは、開館間もない博物館の活動を広くアピールする機会となりました。

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