5月10日、博物館を拠点に活動する専門ボランティアグループの相模原植物調査会のみなさんが、久しぶりに博物館へ集まりました。その理由は、こちらの植物の勉強会のためです。
一見するとふつうのキンランのように見えますが、花の形にちょっと変異を含むツクバキンランいうものなのです。この日、ツクバキンランを品種として記載(新品種を論文として発表すること)した早川宗志さん(ふじのくに地球環境史ミュージアム准教授)が当館の植物標本庫へ標本調査に来られることになり、合わせて市内でも謎の?分布のあるツクバキンランについての勉強会を開くことにしたのです。
まずはラン科植物の概説から、ランの花の唇弁(花弁のうちの一枚で、変形して花を特徴づけるもの)が通常の花弁と同じような形に変異するペロリア化について、そして、キンラン属のペロリアと、その一つであるツクバキンラン発見の経緯などについて解説していただきました。進化の過程でなぜこのような変異が生じるのか、まだまだわからないことが多いのが現状です。でも、こうして少しずつ分布や生態の知見が蓄積し、この分野の研究が進むと、私たちの常識を覆すような進化の秘密が明らかになるかもしれません。そんなワクワクするお話であっという間に1時間が経ちました。
そして、問題のツクバキンランを見に、市内の生育地へみんなで出かけました。
生育地で実際に咲いているツクバキンランを見ながら、記載者に解説していただくなんて、とても贅沢な時間です。ここでは、通常のキンランも咲きます。唇弁があり、左右対称の花です。
こちらは、ツクバキンランです。唇弁が通常の花弁のように変異し、花の形が点対称(放射相称)になります。ただし、花があまり開かない性質のためちょっとわかりにくいですね。
この緑地をずっと管理し、守ってきた地元の方も、長年の謎だったこのキンランを、記載した研究者に見ていただけたことにとても喜ばれていました。
新型コロナウイルスの感染状況を見ながらとなりますが、こうした勉強会も少しずつ再開していきたいと考えています。