博物館が収蔵している民俗資料のうち、もっとも多いのが畑作や養蚕などの農業に使われていた道具です。そして、人々の生活に欠かせなかった衣食住に関わる道具なども比較的多く保管しています。
今回紹介するのは、かつて住居が草屋根だった時に、屋根替えなどといって屋根を直したりする際に使われた道具です。市内では屋根の材料として、非常にたくさん作られていた小麦の穂を収穫した後の、茎(くき)の部分である麦稈(むぎから)が多く使われました。
最初の写真はいずれも緑区大島の方からの寄贈で、ハサミは屋根材の麦稈を切り整えるのに使い、鎌で麦稈を縛って固定する竹や縄を切ったりしました。
次の写真は「屋根こて」(緑区中沢)です。屋根に麦稈などを差してこれで叩きます。柄の先に付いている板が段々になっているのが特徴です。
このほかに「屋根針」(南区上鶴間本町)などもあり、麦稈を屋根の上から下側に縛りつけるのに使いました。
ところで、博物館の「自然・歴史展示室」には、中央区清新にあった開墾農家を復元した草ぶきの民家が展示されていますが、この屋根の棟(むね)には照明があたっています。これはわざと植物(イチハツ)を植えて根を生えさせ、屋根の重要な部分である棟が崩れないようにしてあるもので、自然に生えた植物を表しているのではありません。博物館に来たら見逃さないように、気をつけて見学をお願いします。