いま、あちらこちらで、ヒルガオ科の代表的な雑草であるコヒルガオが咲いています。つる植物は全体的に好きなのですが、特にヒルガオ科は私がもっとも気にしている植物群です。博物館のまわりでも、あちらこちらにつるを伸ばし、かわいい薄桃色の花を咲かせています。
さて、ほんとうにどこにでもある花ですが、じつは識別がとても難しい植物でもあります。頭に「コ」と付いている以上、本家筋の「ヒルガオ」があります。ところが、コヒルガオとヒルガオは明確に区別できる点が少なく、いくつかの識別点を付き合わせないと特定できません。コヒルガオの特徴である、苞葉の下のひだひだがあれば、まあコヒルガオと判定できます。
しかし、コヒルガオをよく観察していると、同じつるについた花でも、ひだのある花と無い花があります。図鑑では、葉の形や花の大きさなどを一応分けて記述していますが、これもあまりアテになりません。両種とも個体差が著しいのです。苞葉の下のひだがあればコヒルガオと判断していますが、ひだの無い株は、「あてにならない」一般的な特徴を付き合わせて総合的に判断するしかありません。まあ、そんな難しさも好きな植物を見るうえでは楽しみなのですが…。
さらに楽しいことといえば、コヒルガオもヒルガオも、なかなかタネを実らせません。地下でつながった同じ株の花の花粉を、めしべが受け付けないからです。今年はまだ見つけていませんが、コヒルガオのタネの発見は、私にとって茶柱が立つ以上にラッキーなことなのです!
ちょっとマニアックな領域に走りすぎたので、軌道修正します。「昼顔」という意味の名前ですが、じっさいは朝から咲いています。アサガオよりも遅い時刻まで咲いているのでついた名前でしょう。これからしばらく、道ばたでヒルガオをゴソゴソやりたい衝動にかられる日々が続きます(不審者に間違われるといやなので、あまりゴソゴソやらないようにしています)。
(生物担当学芸員 秋山)