6月15日に今年度の津久井城市民協働調査の講習会を津久井湖城山公園で開催し、25名の参加がありました。
今回の講師は近藤英夫さんです。近藤さんは東海大学名誉教授であり、前日本考古学協会副会長、津久井城遺跡調査団団長を歴任されました。
現在の津久井湖城山公園の建設にあたり、津久井城をどのように保存するのか考え抜かれた方であり、近藤さんがいなければ今の津久井城はありません。東海大学の石丸煕さんと共に津久井城御屋敷曲輪などを発掘調査され、御屋敷曲輪がどのようなものかその位置付けを考古学の観点から検討しました。下の写真はその発掘調査の成果をまとめたもので、博物館2階の市民研究室で閲覧できます。
当日は2部構成の講座を行いました。はじめに文化財の在り方、無形文化財、有形文化財などを概観したのちに、「埋蔵文化財」と呼ばれる遺跡は発掘調査とその後の整理作業を行うことで、その遺跡の特徴が明らかになることが強調されました。そして、文化財そのものが地域のアイデンティティを物語るとされました。
さらに、文化財をどのように保存し、地域に活用するのか。地域の事例として茅ヶ崎市の国指定史跡旧相模川橋脚や、南アルプス市の六科丘古墳などを話されました。その後、津久井城の市民協働調査について、「調査・研究・活用の諸段階を市民とともに経験している。これは大変貴重な事例なので今後もぜひ継続して欲しい。」と評価されました。
津久井湖城山公園の建設と津久井城の保存は、単なる公園建設ではなく「遺跡を守る前提で公園がつくられた」点が重要です。そして、発掘調査時点の見解はその時点のものであり、この先、研究の進展や発掘調査技術の進歩があるかもしれません。そのため、津久井城の全てを掘り尽くして発掘調査を完了とせず、未調査の部分を意図的に残すこともまた必要です。
これは津久井湖城山公園の公園整備の基本的な考えであり、市民協働調査を継続していく中でも、常に立ち返るべき重要な視点といえるでしょう。
さて、7月の講習会は、発掘調査で発見された「土壁」に注目し、津久井城の建物址の考察を踏まえて、土壁の製作実験を行う予定です。またこの職員ブログで発信しますので、お楽しみに!