8月13日、台風8号の接近で相模原市も嵐となりました。翌14日は、台風一過という爽やかさは無いものの、晴れて蒸し暑い真夏が戻ってきました。こんな時は、博物館お隣の樹林地は生きものの気配が濃くなります。目の前を高速で何かが飛んだと思ったら、クズの葉の上にピタリととまりました。
キマダラセセリです。一見地味で小さな虫ですが、よく見るとオレンジ色の翅(はね)と大きな目、モフモフの毛でおおわれた姿がかわいらしいチョウです。
すぐそばのクズのつる上では、オジロアシナガゾウムシが交尾していました。
なぜか、クズの葉の上にツクツクボウシの抜け殻がありました。セミの羽化は重力を使うので、地面に対して垂直か、または逆さまにならないと抜けません。葉の上面の、しかも頭を斜め下に向けているので、ふつうに見る抜け殻とは真逆の向きです。こんな姿勢ではうまく羽化できないように思いますが・・
これにはちょっと説明が必要です。クズなどのマメ科植物の多くが、葉の調位(ちょうい)運動をします。これは、光合成の効率を上げるために、太陽光との角度を調節するように葉の向きを変える運動です。おそらくこの葉は、ツクツクボウシの幼虫が羽化場所を求めて歩き回っている時は、葉が垂れ下がり、ツクツクボウシは地面と垂直にとまれたのでしょう。
調位運動は太陽の向きや温度などと関係するため、単純に夜は垂れ下がって昼間は開くというような動きではありません。写真の場所も林内で日陰になるため、どのような動きをしていたかわかりませんが、ともかく、ツクツクボウシが羽化するには好都合の向きだったことは間違いないでしょう。
そんなことを考えていたら、視界の隅に目線を感じました。
ニホンカナヘビが、こちらを伺っていました。そっと回り込んで、全身が見える位置から撮影できました。
気持ちのよい場所だったのか、カメラを近づけると目線は向けるのですが、逃げません。邪魔をしないよう、撮影後はそっとその場を離れました。