前回取り上げた正月行事は、毎年同じ日時に行われる年中行事ですが、人の一生の間に行われる人生儀礼にもさまざまなものがあります。今回は、その中でも女性の婚礼にまつわる資料を紹介します。
最初の写真は婚礼の際に着た打ち掛けです。第二次世界大戦後の間もない時期に、南区上鶴間から町田の地主の家に嫁入りした際に着られたもので、鶴が舞い、さまざまな草花が描かれるなど、華やかな装いです。
次の写真は、緑区相原から中央区上矢部に昭和14~15年(1939~40)頃に嫁入りした方が持ってきた着物の一つで、白い色をしています。意外に思われるかもしれませんが、かつて女性は自分の親(実家・婚家の両方)の葬式にはこうした白の着物を着ており、この写真の着物も喪服だろうとのことです。
和式結婚式では現在でも日本髪に結いますが、次の写真は、昭和17年(1942)に中央区淵野辺から南区下溝に嫁入りした方が使ったもので、上側は鼈甲(べっこう)製の櫛(くし)と笄(こうがい)・簪(かんざし)、下側も同じく櫛・笄(左)と簪(右)です。笄は髪型をまとめて髷(まげ)にさして飾り、簪も髪飾りで笄と組みで用います。
こういったものはその家で一番最初に結婚する人が買って、その後、姉妹が順番に使って一番最後に結婚した人がそのまま保管したそうで、この資料は昭和10年(1935)頃に、姉が結婚する際に町田の店から買ったとのことです。
また、この方からは、ご自分の結婚式で使った他のものも寄贈いただいており、次の写真の上側が角隠し(つのかくし)の布、左が末広(すえひろ)、右が筥迫(はこせこ)です。
角隠しは花嫁の被り物で、布の真ん中を開いてとがった形にします。末広は花嫁が手に持つ扇子(せんす)です。筥迫は紙入れで、花嫁が着物からちょっと見えるようにして飾りものとして使います。
最後の写真は箱枕(はこまくら)で、以前のブログでも南区古淵から緑区下九沢に嫁入りした方の箱枕を紹介しましたが、この箱枕も髪飾りなどと同じく下溝の方が嫁入り道具の一つとして持参したものです。嫁入り道具には布団(ふとん)のほか、通常の枕とともに日本髪を結った時に使う箱枕の両方を持ってきました。
なお、この職員ブログで以前掲載していた「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」No.71「人生儀礼」では、結婚して初めて三月の節供を迎えた際にお嫁さんの実家から贈られた「おくりびな」なども紹介していますので、併せてご覧ください。
「人生儀礼」 https://www.sagami-portal.com/city/scmblog/archives/27135