4月3日、市内南区下溝の横浜市水道局相模原沈殿池へ行きました。ここは水鳥が多く越冬する場所として知られているので、春になってどんな様子になっているか確認するためです。この季節の見どころの一つ、夏羽に換羽(かんう)したカンムリカイツブリです。
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カンムリカイツブリ(夏羽)
カイツブリの仲間がカモの仲間と大きく異なることの一つは、基本的にオスとメスの繁殖期の羽色が同じということです。カンムリカイツブリも、雌雄ともにこのような美しい羽色で繁殖期を迎えます。
こちらはオカヨシガモです。
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オカヨシガモのオス(左)とメス(右)
一見地味に見えるのですが、オスの翼の羽は渋い装飾が施されていて、よく見るととても美しいのです。
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オカヨシガモのオス
一方メスは、近い仲間のマガモのメスとそっくりです。
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マガモのメス 羽づくろい中
でも、ちゃんと識別ポイントがあります。上の写真はマガモのメスが羽づくろいをしているところなのですが、翼の中央あたりに美しい青色が見えます。これは翼鏡(よくきょう)と言って、この仲間の大きな特徴の一つです。飛ぶとわかりやすいのですが、下の写真で赤丸の中、翼の下側中央付近に生える地列風切(じれつかざきり)という部分に色が付いています。
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マガモのオス 赤丸の中の青い部分が翼鏡で、地列風切と呼ばれる部分
マガモはこのように青色(光線の加減によって紫色にも見えます)ですが、オカヨシガモはオスもメスも翼鏡は白色です。
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オカヨシガモのメス 翼鏡は白色
日本の淡水で見られるカモで翼鏡が白く、オカヨシガモとメス同士が似ている種類はいないので、よい識別ポイントになります。
カモ類の多くは、繁殖期の前の、ペアを作る時期である冬にオスが装飾的な羽色になります。北方へ渡って繁殖が始まる頃(初夏)には、オスもメスと同じような地味な色合いに換羽します。他の鳥の多くが繁殖期に美しい羽色になることから、それと区別してカモ類の地味な羽色をエクリプス(原意は日蝕:にっしょく)と呼びます。越冬期に羽色が美しくなるのは、夏が短い北方で繁殖するため、越冬地でペアを作って繁殖地へ渡ったらすぐに繁殖を始められるためと考えられます。相模原沈殿池のカモも、オスとメスが2羽で行動していることが多いので、旅立ちの日も近いということかもしれません。(生物担当学芸員)